写真館のためのIT豆知識 - 第1回「写真を保存する機器 (ストレージ) を選ぼう!」

第1回「写真を保存する機器 (ストレージ) を選ぼう!」

2011/05/01
千葉 豊 (株式会社エグゼック)

はじめに

株式会社エグゼックで技術を担当しております 千葉と申します。今年も1年間にわたり 日本写真館協会が発行する冊子「ザ・写真館」に広告を出させて頂く事になり、私が記事の担当となりました。

ただ広告を出してもオモシロクない!ということで、システム開発会社である私たちが、写真館さまのために何かお役に立てることはないか、と考えた結果、「写真館のためのIT豆知識」と題して、全6回にわたり写真館さまに有益なジャンルのITネタを書かせて頂くことになりました。

当社はフォトストアというインターネット写真販売システムを全国の写真館さまに提供させて頂いております。そのため、写真館さまとお話をする機会が多いのですが、皆さま写真データの保存の仕方に困っているのだなといつも思っていました。

そこで第1回目は、写真データを保存するために必要となる「ストレージ (storage)」を取り上げます。写真館の皆さまがご自身に合ったストレージを選ぶ際の参考となれば幸いです。

さて、一番身近なストレージと言えば、パソコンに内蔵されているハードディスクでしょう。

皆さま最初はパソコンのハードディスクに写真データを保存されると思いますが、気が付いたら容量がいっぱいになっていた、なんてことはないでしょうか?

そんなときに、まず最初に思いつくのは、家電量販店に出向いて 1. USB接続の外付けハードディスクを購入する方法でしょうか。

パソコンに詳しい方は、2. ハードディスクそのものを購入してパソコンに増設したり、または 3.NAS (読み方:ナス | Network Attatched SCSI の略) を購入する方法を選ばれるかもしれません。

また、最近クラウドという言葉を良く耳にしますが、外部の業者にストレージを借りる 4. オンラインストレージを選ぶ方もいらっしゃるでしょう。

これらはすべてストレージに分類されますが、いったい何が違うのでしょうか?

それぞれのストレージの特徴をご説明しましょう。

各ストレージの特徴

1. 外付けハードディスク

外付けハードディスク BUFFALO社 製 外付けHDD

難しい設定が不要なことが、外付けハードディスクの一番の魅力でしょう。多くの場合、パソコンにUSBを挿すだけで、すぐに使いはじめることができます。

USBでのPCへの接続は、この後にご説明するNASなど、LANケーブルを利用したネットワーク接続に比べると、転送速度が速いので、写真データの移動やコピーが短時間で完了するのもうれしい点です。

また、価格も手頃で、2TBクラスの大容量の外付けハードディスクが、1万円を切るくらいからの値段で購入できます(※2011年5月現在)。

このように、いいことずくめの外付けハードディスクですが、一方で、複数パソコンからの写真の共有が面倒という大きな欠点があります。

別のパソコンで写真データを読み込みたい、と思ったら、その都度、今使っているPCに挿さっているUSBを抜いて、別のパソコンに挿し替えなくてはなりません。

(OSのファイル共有機能を利用して、外付けハードディスク内の写真を共有する方法もありますが、共有の設定が必要ですし、他のパソコンからアクセスしたいときには、USB接続しているパソコンの電源を常に入れておく必要があります。また他のパソコンからのアクセスの場合、ネットワーク + USB経由でのアクセスとなるので、転送速度がNASと同等かそれ以上に遅くなってしまいます。)

他には、欠点という程ではありませんが、内蔵ハードディスクやオンラインストレージと比べると、機器の設置のためのスペースが必要になるということもあるでしょう。


○ 外付けハードディスクのメリット

  • 設定が簡単。
  • 価格が手頃。
  • 転送速度が速い。

× 外付けハードディスクのデメリット

  • 複数パソコンからの写真の共有が面倒。
  • HDDを追加して容量を増設することが難しい。
  • 設置スペースが新たに必要となる。

2. パソコン内蔵ハードディスク

パソコン内蔵ハードディスク

ハードディスクをパソコンの内部に増設するメリットは、転送速度が非常に速いという点にあります。

外付けハードディスク同様、写真データの移動やコピーが短時間で完了するのですが、SATA2接続の内蔵ハードディスクの転送速度は、USB接続の外付けハードディスクに比べて、理論値で約5倍も速くなります。

また、ハードディスクだけを購入すれば良いので価格も非常に安く、2TBの大容量のハードディスク(3.5インチ/SATA) が、6千円くらいから購入できるのもメリットです(※2011年5月現在)。

しかし、増設するためには、パソコンのハードウェア本体を開けて、所定の位置にハードディスクを設置する必要があり、機種やOSによって使用できるハードディスクの種類が変わってくるなど、パソコンの知識がかなり必要になってきます。

また、新たに設置スペースを取らずに増設できるのはメリットですが、一台のパソコンの中に増設できるハードディスクの数には限界があることにも注意しなければなりません。中にはまったく増設ができないパソコンもあります。

もう一つ、外付けハードディスクと同様に、複数パソコンからの写真の共有が面倒という欠点もあります。しかも外付けハードディスクと違って、持ち運んだり、USBを挿し替えて別のパソコンで写真データを読み込むことができないため、写真の共有をするためには、OSのファイル共有機能を利用する必要があり、これまたパソコンの知識が必要になります。


○ パソコン内蔵ハードディスクのメリット

  • 価格が安い。
  • 転送速度が非常に速い。
  • 設置スペースを新たに必要としない。

× パソコン内蔵ハードディスクのデメリット

  • 設定が難しい。パソコンの知識が必要。
  • 複数パソコンからの写真の共有が面倒。
  • 増設できるHDDの数に制限がある。

3. NAS (読み方:ナス | Network Attatched SCSI の略)

NAS BUFFALO社 製 NAS

NASを導入する一番のメリットは、何といっても、複数台のパソコンから簡単に写真の共有ができることでしょう。いちいち写真データをUSBメモリにコピーして運んだり、CDに焼いたりせずとも、パソコン間で写真データの移動ができ、管理が格段に楽になります。

また、USBケーブルが届く範囲のパソコンとしか接続できない外付けハードディスクと違い、NASならばLANケーブルさえあれば、別の部屋のパソコンからもNAS上の写真データに直接アクセスできます。

NASの転送速度は、外付けハードディスクに比べると遅くなりますが、共有のメリットを考えればそれも十分受け入れることができます。有線でつなげば、この後出てくるオンラインストレージとは比べものにならない速度になります。

素晴らしい共有機能を持つNASですが、しかしながら、安価な機種から高価な機種まで非常に幅があり、機種の選択には十分な考慮が必要になります。

NASの価格帯に幅があるのは、主に性能の違いによるもので、中でも、同時に接続するパソコンの数は重要なポイントです。数人で使用する場合なら、3〜5万円で程度で販売されている、安いNASでも十分だと思います。しかし、パソコンの数が多いのであれば、相応のNASを選ばないと、転送速度が落ちて使い物にならなくなるでしょう。

他には、高価なNASの場合、後からストレージの容量を拡張することができる機種があり、写真データが増えても対応が可能です。


○ NASのメリット

  • 複数パソコンからの写真の共有が簡単。
  • 高価な機種では、HDDを追加して容量を後から拡張できるものがある。

× NASのデメリット

  • 安価なものから高価なものまで幅があり、機種の選択が難しい。
  • 設定が難しい。ネットワークの知識が必要。
  • 転送速度が遅い。
  • 設置スペースが新たに必要となる。

4. オンラインストレージ

オンラインストレージ

オンラインストレージは、写真データをインターネットの先にある業者のストレージに保管できるサービスで、最近にわかに注目されています。

一番のメリットは、インターネット環境とパソコンさえあれば、「いつでも」「どこでも」写真データにアクセスできる点でしょう。そのため写真データの共有が簡単に実現でき、客先や自宅など、社外からも写真データにアクセスすることが可能です。逆に言うとオンライン環境がないと、写真データを見ることができません。

また、自身でハードウェアを管理する必要がないため、ハードディスク障害などで大切な写真データを失ってしまうなどのトラブルから開放される安心感があるのも魅力ですし、容量の増設が簡単にできるのも、他のストレージに比べて特徴的だと言えるでしょう。

多くの場合、1. Webサイトでアカウントを作成、2. 容量プランを選択、3. 専用ソフトウェアのダウンロード・インストール ですぐに使えるようになるので、利用も簡単です。

しかしながら、オンラインストレージの場合、年または月単位で利用料金を払わなければいけません。しかも写真データを大量に保管できるような容量を契約すると、非常に高額になってきます。

例えば有名な「SafeSync」というサービスでは、容量100GBで年間14,800円となっています。

他には、転送速度や、一度にアップ出来るファイルの容量、月間に利用出来る容量の上限などもネックとなるでしょう。快適に利用するためには高スペックのパソコンを用意する必要もあると思います。

最後にいくつか、有名なオンラインストレージサービスをご紹介しておきますので、ご参考にしてください。

Dropbox http://www.dropbox.com/
SafeSync http://virusbuster.jp/safesync/
firestorage http://firestorage.jp/

○ オンラインストレージのメリット

  • 設定は簡単。専用ソフトウェアのインストール程度。
  • 複数PCでの写真の共有が簡単。インターネットにつながっていれば、どこからでも写真を参照可能。
  • ハードウェアを自身で管理する必要がないので安心。
  • 容量の増設が簡単。
  • 設置スペースを新たに必要としない。

× オンラインストレージのデメリット

  • オンライン環境がなければ使えない。
  • 年または月単位でランニングコストがかかる。大容量の場合、非常に高額。
  • 転送速度が非常に遅い。高スペックのパソコンが必要。
  • 専用ソフトウェアの使い方に慣れる必要がある。

まとめ

各ストレージの特徴を「表1. ストレージの特徴比較」にまとめましたので、ご確認ください。

表1. ストレージの特徴比較
比較項目 ストレージの種類
外付けHDD PC内蔵HDD NAS オンラインストレージ
設定の容易さ ×
価格の安さ
転送速度 ×
共有のしやすさ × ×
拡張性 ×
省スペース

次回は…

ストレージを選ぶ際のもう一つ重要なポイントとなる「RAID (読み方:レイド | Redundant Arrays of Inexpensive Disks の略)」についてご説明する予定です。

RAID機能を利用すれば、ハードディスク障害から大切な写真データを守ったり、写真データの読み書きのスピードをアップすることが可能になります。

次回もどうぞお楽しみに!

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