こんにちは。株式会社エグゼック 技術担当の千葉です。
「写真館のためのIT豆知識」第2回は、前回に引き続き「ストレージの選び方」についてご説明していきたいと思います。
今回は、ストレージ選びの際に重要なポイントとなる、RAID (読み方:レイド | Redundant Arrays of Inexpensive Disks の略)」を取り上げます。
RAIDとは、複数台のハードディスクをまとめて仮想的な一つのストレージとして扱う技術のことで、ハードディスクの故障から大切なデータを保護したり、ハードディスクへのアクセス速度を速めたりすることが可能です。
以前は、主に企業の基幹システム等で採用されていましたが、ハードディスクの大容量化に伴い、一般ユーザにとっても故障時に失われるデータ量が無視できなくなってきたことや、デジタルデータの重要性の高まりを受けて、最近では、家庭用NASはもちろん、家電量販店で1万円前後で購入できるような外付けハードディスクにも、RAIDの機能が当たり前に搭載されるようになりました。大切な写真データを扱う写真館の皆さまにも、身近になったRAID機能をぜひ積極的に活用していただきたいと思っています。
そんなRAID機能を活用するために最低限おさえておく必要があるのは、RAIDの種類です。RAIDにはいくつかの種類があり、目的や用途に応じて最適なRAIDを選ぶ必要があります。
また、RAIDのデータ保護機能は、あくまでハードディスク故障時にデータを保護するための機能であって、データをバックアップする機能ではない、ということはしっかり理解しておいてください。RAIDには「誤って削除してしまったデータ」を元に戻す機能はありません。
以下では、RAIDの種類と特徴について詳しくご説明していきます。
RAIDには用途に応じていくつかのレベルがあります。ここでは、その中からよく利用される定番のRAIDレベルを3つご紹介しましょう。
ハードディスクを2台以上組み合わせて、読み書き処理を複数のハードディスクに同時並行的に実行することで、アクセス速度の高速化およびディスクの大容量化を目的としています。
ただし、後述するRAID 1やRAID 5のような冗長性(ハードディスクが壊れた時のデータを保護する機能)は備えておらず、耐障害性は高くないどころか、複数のハードディスクのうち1台でも読み出し不能になると、ディスク全体が読み出し不能になるという欠点があります。
ですので、RAID 0を単体で利用することは少なく、他のRAIDレベルと組み合わせて利用されることが多いです。
別名「ストライピング」とも呼ばれます。
通常2台のハードディスクを使って、同一のデータを各ハードディスクに書き込み、一方のハードディスクが故障しても、他方で処理を続行することを目的としています。
要は、同じデータを格納したハードディスクを複製することで障害に備えているわけです。
ただし、同一のデータを2台のハードディスクに書き込むため、ハードディスクの使用効率は50%になってしまうという欠点があります。たとえば1TBのデータを保存するには、1TB×2 = 2TB分のハードディスクを必要とします。
別名「ミラーリング」とも呼ばれます。
設定・復旧の容易さ、データの保護という観点からは一番おすすめのRAIDレベルです。
耐障害性の向上と高速化、大容量化のすべてを実現することを目的としています。最低3台以上のハードディスクを必要とします。
ハードディスクの故障時に記録データを修復するために「パリティ」と呼ばれる冗長コードを、全ハードディスクに分散して保存し、万一ハードディスクの1台が故障しても、残ったデータとパリティ情報から破損したデータを割り出すことができます。
パリティに必要な容量はハードディスク1台分で済むため、ミラーリングよりも効率よくディスク領域を使用できるのも特徴です。RAID5では、ディスクからの読み出し時には、複数ディスクからの同時並行読み出しが可能なので高速化されますが、データの書き込み時にはパリティを算出しなければならず、その分のオーバーヘッドがかかります。
RAID対応ストレージには、ホットスワップと呼ばれる機能が付いているものがあります。その場合、ハードディスク障害時にシステム全体を止めることなく、障害が発生したハードディスクを取り外し、新品のハードディスクと交換することができるため、非常に便利です。
ホットスワップ非対応の場合は、いったんコンピュータを停止して電源を切り、ハードディスクを交換してから再起動する必要があります。
なお、RAIDでは使用するハードディスクを同じメーカーの同じ型番の物にすることが推奨されています。これは、同じ容量のハードディスクであってもメーカーや機種が異なるとセクタ数やディスク回転速度、転送速度などに違いがある為、効率が低下する場合があるためです。
RAIDをバックアップと勘違いされている方を時々お見かけします。しかしながら、RAIDはどのレベルであっても、データを復旧するためのものではなく、あくまでハードディスク障害に対応するための仕組みです。
ですので、たとえRAID 5を利用していても、1本までのハードディスクの故障なら動き続けられますが、2本目以上のハードディスクに障害が起きたとしたら、そこでもうデータの復旧はできなくなってしまいます。
大切なデータを守るためには、RAIDを組んだからと言って満足するのではなく、必ずバックアップを取るように心がけてください。
各RAIDの特徴を「表1. RAIDの特徴比較」にまとめましたので、ご確認ください。
比較項目 | RAIDの種類 | ||
---|---|---|---|
RAID 0 | RAID 1 | RAID 5 | |
信頼性 | × | ◎ | ○ |
読み出し速度 | ◎ | ○ | ○ |
書き込み速度 | ○ | ○ | △ |
容量効率 | ◎ | × | ○ |
ストレージ選びの実践編として、最近話題のストレージ「Drobo (読み方:ディーロボ)」 を実際に導入・設定してみましょう。
Droboは従来のRAIDの制限を克服した画期的な外付けのストレージボックスで、内蔵するハードディスクの種類や容量を気にせずにRAID機能を利用することができるという優れものです。
次回もどうぞお楽しみに!